貴方へ

 あいなんていうのは、この世でもっとも不確かな存在です。
 なぜ人はそんな物に惹かれるのでしょうか。
 たくさんの思い出を得ても、別れてしまえばそれも悲しい幻想。
 がんじがらめになってから気づいてももう遅いのです。
 だれがこの苦しみを理解できましょうか。
 いま此処に居ない人を……遠い人を想うことの辛さを。
 すいぎょくの輝きを持つ木々も、今では枯れています。
 きせつは過ぎ去り、けれど気持ちはあの頃のまま。
 とり戻せない時間はナイフとなって、幾たびも私の心を抉ります。
 わすれようとしても、愛の亡骸は執拗に叫ぶのです。
 にじんでしまった絵画のような、歪な恋を。それを聞くたび、
「いつか、もしかしたら……」そんな淡い期待を抱いてしまいます。でも、
 ついおくの世界ももう終わりです。私も老いました。
 しが足音を立てて近づいてきました。しかし悲しむ必要はないのです。
 よういされた生を精一杯生き、私は逝くのですから。
 にい様……今度こそ、ご一緒させて下さい……

UP:2008/01/20