<激情>の魔女

 遠慮がちな木漏れ日が注ぎ、葉がさわりと鳴る。肌を撫でる冷えた空気が、起きて間もない体に心地よかった。耳に届くのは穏やかな小鳥達のさえずり。森はいつでも静かに佇み、そっと魔女を包み込んでくれる。
 座ったまま大きく伸びをして深く息を吸い込む、苦味さえ伴うような緑が、肺を満たした。この噎せ返るほどの匂いが魔女は好きだった。母なる恵みはいつでも魔女と共にある。そう実感できるからだ。
 十分くつろいだところで、さて、と口を開く。
「有名どころだと<氷>の魔女だな。吐息でモノを凍らすんだが、暑い日に一吹きしてもらうと涼しくてなぁ、ヒヒヒ」
 大胆に肌を露出させた黒い魔女服に身を包み、炭色の瞳を愉快そうに細めている。沈む夕陽にも似た紅蓮の髪をさっとかきあげ、細い首もとを指して笑った。
 まだ年若い、齢二百程度の小娘魔女だ。数多いる魔女の中でも年少の部類に入る。
 それでも自然を従え実りをもたらす魔女には相違なく、近隣の村はこの森を聖域として近づこうとしない。
「<蛇>の魔女ってのもいるな。十秒間目が合った相手を石にしちまう。だからよく瞬きしてるぞ。怒ると目ぇ見開いてガンつけてくるからすぐ分かる」
「魔女さま以外にも、いっぱい魔女さまがいるんだね」
 唯一、この少年イルを除いて。
 澄んだ空気と豊かな自然以外に誇るものもない農村、広がる畑と点在する家々だけが視界を埋める。だからこそ「魔女」という異物が幼い好奇心を刺激するのだろう、少年は毎日のように訪ねてくる。
 決して口にはしないが、彼の来訪が一番の楽しみとなっていた。素直な肯定が何よりも魔女を満たす。
「ま、アタシほど素晴らしい魔女なんていねーがな」
 少年はうんうんと頷いて、
「魔女さまはどんなことができるの?」
「あぁ~ん? お前、このアタシの力を知らないのかぁ?」
 八重歯を見せてニヤニヤする。少年の頬を両手で包み、頭に染み込ませるようにゆっくり囁いた。
「アタシは偉大なる<激情>の魔女。燻る想いに火を灯す者だ」
 その力は、ただ傍に在るだけで他者の秘めたる想いを昂ぶらせ、その名の通り身をも焦がす激しい感情へと変化させる。しかし呼び起こされるのは決してよい感情ばかりではない。感情を弄ぶ邪悪の魔女だと追われたことも、一度や二度ではなかった。豊穣を司る魔女としての側面より、気持ちを暴く<激情>への嫌悪感が勝ったようだ。
 他の魔女が人間社会に溶け込んで楽しんでいるのを横目に、激情は独り森の中、孤独に沈んでいた。それと引き換えに手に入れた平穏は、しかし激情を満足させるには至らなかった。
 もう一度人里におりてみようか。そんな風に考えだした折にひょっこりやって来たのがこのイルだった。一年ほど前の話だ。旺盛な好奇心は尽きることを知らず、話をせがむ姿はさながら飼い主に甘える仔犬である。その好奇心の何割かは自分の力の影響かもしれないが。
「アタシの前でウソはつけないって覚えておけ。ま、人間如きが魔女を騙そうなんて百年早いがな」
「ウソが分かっちゃうの? すごいね!」
 尊敬の眼差しに満足した激情は、他の魔女の逸話も気前よく話してやった。そのひとつひとつを、少年は宝石を扱うように大切に聞いていた。
「ヒヒヒ、次はお前の番だぞ?」
 話が一段落し、少年に水を向けた。
 魔女に願い事をするには、相応の対価を以って契約しなければならない。反故にすると手痛い報復が待っていることから、魔女との契約を呪いと呼ぶ者もいる。魔女側から言わせれば、約束を違える人間が悪いのだ。
 此度の「魔女さまの話を聞かせて」という願いに対し激情が要求したのは、村での出来事を教えることだった。幼い言葉で語られるそれはたどたどしく、少年の手の届く範囲でしかないが、激情には十分だった。
 たとえば「いい子にしてないと<激情>の魔女に攫われるよ」などと恐ろしい怪物のように語られたり、そもそもこの森に魔女などいないと思われていたという、衝撃の事実も発覚した。
「ケッ、黙ってりゃ好き勝手言いやがって」
 この一帯が飢饉も知らずにいられるのは誰のお陰だと思っている。どっか行っちまうぞ。
 イルは「お母さんの言うことも聞いていい子だから大丈夫」と、大人が止めるのも聞かず魔女を探しに来たらしい。その時点で親の言うことを聞いていないことになるが、それは無視するようだ。そういうところはいかにも子どもらしい。
「昨日から妹が具合悪いの。熱があって苦しそう」
「ふぅん? 薬でも飲ませときゃすぐ治るだろ」
 遊びに来た蝶に花蜜を取ってやりながら、適当な相槌を打つ。妹の話はこれまでも聞いたことがあった。イルの幼なじみと仲がよく、すでに将来を誓い合う仲だという。「ずっと一緒にいようね」という、ありがちな幼い宣誓だ。
「お薬は、高くて買えないってお母さんが言ってた」
 肩を落とす少年。「ほぅ?」激情は眉を上げる。なるほど確かに、少年の衣服はいつもくたびれた襤褸だ。
 少年の話を聞いていると、それが自分でも治せる病だと気づいた。魔女の豊富な知識は人間のそれを遥かに凌駕する。中には人間の弟子を取る物好きな魔女もおり、教えを受けた者は呪術師と呼ばれ尊ばれた。生憎激情にはそんな愛想と気前のよさはない。
 だが、これはよいきっかけになる。
 人間に追われ、自身も人を拒絶し、やがて誰も訪れなくなって百余年が経つ。ついには実在さえも疑われているという、由々しき事態。
 今更理由もなく出て行くのは自分に相応しくないしちょっと恥ずかしい、と、激情なりの理屈とプライドがある。しかし病気を治してやるという名目があれば、どうだ? 人間に寄り添う様がいかにも偉大な魔女っぽいし、森に魔女はいないなどとほざく輩も黙るに違いない。
 イルだけでも話し相手としては問題ないが、彼が来ないとき退屈なのは相変わらずだ。いかに一人遊びが得意な激情といえども、結局のところ独りは嫌なのである。
 ――ヒッヒッヒ、我ながら恐ろしい程の名案だ。
「おいガキ。その病、アタシが治してやるよ」
 少年は刹那目を丸くしたが、すぐに「えっ、ほんとう、魔女さま!」飛びついてきた。
 そうと決まれば魔女の行動は早かった。必要な薬草類を採取すると少年を伴って人里へと赴く。
「アッハハ! 外だ! 空が広いぞ!」
 ひとしきり感動すると、イルを引きずるように道案内させる。
 人にあり得ぬ紅髪はよく目立つのだろう。魔女の姿を認めた人間たちはぎょっとして道を譲った。
「ヒヒヒ、テメェら、誰が人攫いの怪物だって? あぁ~ん!?」
 人間達の慌てふためく様が実に小気味よい。久しく忘れていた悪戯心が歓喜していた。
「森に魔女がいないだと? 随分と好き勝手言ってくれたなぁ?」
 突如現れた魔女を遠巻きに眺める連中に逐一絡みながら、ようやく少年の家へと辿り着いた。騒ぎは届いていたようで、母親らしき人間が外にいる。少年がパッと駆け寄り「お母さん、魔女さまが来てくれた!」その腰に縋る。
「まぁ、この方が魔女さまなのね? いつも息子から話を伺っております。何かご迷惑をお掛けしてはいないでしょうか」
「う、うむ。苦しゅうないぞ!」
 意外な反応に戸惑いつつ持ってきた薬草を見せ「そいつの妹が病気だってなぁ?」ニヤリと笑う。
「イルがどーーしてもって泣いて頼むから治しに来てやったんだ。この偉大なる<激情>の魔女さまがな!」
 話を都合よく盛るのは激情の常である。イルも魔女が家にやって来たことで興奮気味のようで、特に異を唱えない。母は感謝を述べるとすんなり中へと招き入れた。
「この子ったら、魔女さまが大好きで、毎日話をしてくれるんですよ。最初は、本当に森に魔女がいるなんて信じられませんでしたけど」
「大好き……ふ、ふん! 確かに百年くらい人前には出なかったがな」
 ともすれば緩みそうになる頬を誤魔化すように唇を尖らした。
 案内された部屋では、粗末なベッドで眠る少女が浅い呼吸を繰り返していた。なるほど少年とよく似ている。不安そうに見上げてくるイルに頷いてやると、
「ヒッヒッヒ、すぐ終わらせる」
 慣れた手つきで薬を作り始める。二人が興味深そうに見守る中、水に溶かして口に流し込んでやった。
「アタシは優しいからな、しばらく診に来てやる。数日後には下がるハズだ」
 その言葉通り、五日も経てば熱もウソのように下がっていた。この献身的な魔女の噂を聞いた村人とも少しずつ距離を縮めており、当初の目的も大いに達成されて上機嫌である。彼らの賛辞や崇敬にすっかりご満悦の激情は、乞われれば薬も作ってやった。
 イルも大喜びで、森へ帰る激情を見送りに来た両親も繰り返し頭を下げる。母の傍らには元気になった妹の姿もあり、親の後ろに隠れて気恥ずかしそうに激情を見上げていた。
「魔女さま、また来てくれる?」
「まぁ、どうしてもって言うなら来てやらんでもないぞ」
 イルはぱっと表情を輝かせると、魔女の手をぎゅっと握った。
「あのね、僕、魔女さまとずっと一緒にいたい。だからね、だからね」
 見上げてくる瞳はどこまでも透き通っている。
「僕が大きくなったら、お嫁さんになって!」
「はあぁぁぁん!?」
 予想しなかった唐突な言葉に、自分の耳とイルの頭を疑う。
「お前それ、馬が一角獣に求愛するようなもんだぞ。魔女は不老だぞ? 分かってるのか?」
 少年の家族は三者三様、父は「魔女さまを困らせるんじゃない」と慌て、母は微笑ましそうに息子の健闘を見守り、妹はボソリと「お兄ちゃん、頑張って」と応援していた。
「ダメ? 僕、魔女さまのこと大好きだよ!」
 純真無垢な告白に思い切り頭をかく。眼差しに耐え切れなくて、つい視線を外した。
 この感情が<激情>によって膨れ上がったのは明白だった。それだけ密度の高い日々を共に過ごした。
「十年だ!」
 激情は確かめたかった。恐れたと言ってもよい。
 共に笑い合っていた者が、徐々に自分から離れ、嫌悪感を露わにする。ふとした拍子に浮かび上がる、遠い遠い記憶。心の何処かでは、自分のことを薄気味悪いと思っていたのだ。
 否が応でも<激情>は感情を弄ぶ。それは事実だ。その力によって燃え上がったこの感情が、自分と離れても彼の心に灯されているのか、それとも放っておけばやがては灰になるような小さな感情なのか。現実的に考えたら後者だろう。
「十年経っても同じ台詞が言えたら、その願いを叶えてやろう」
 そして、自分の中にあるこの灯火もまた、消え逝くだけなのかどうかを。
 ――否、これは言い訳だ。臆病な自分への。 
「今日からちょうど十年後の夕刻に、いつものあの場所だ。それまでお前とは会わん。分かったな!」
 一方的に告げると、魔女は逃げるように森へ走り去った。



 追想に微笑する。視界はすでにあの田舎村を捉えていた。
 自分の出した条件のせいで暇を持て余す羽目になった激情は、この物好きな人間の話をしようと世界中の魔女を訪ねて回ることにした。村での交流が成功したせいで気が緩んでいたのかもしれない。
 案の定、どの魔女も<激情>を煙たがり、すぐ追い返されるばかりだった。
 辛うじて話を聞いた魔女も、柄にもなく人間にご執心な激情を見て「寂しくてついに頭がおかしくなったか」「人間と魔女が結ばれるなんて無理だ」と腹を抱えて笑った。
「ケッ……そんなこと……」
 記憶の残像を追い払う。幼かった少年はどうなっているのか。逸る心が、踏み出す足を急かす。
「ヒヒヒッ、先に覗いてやるか」
 夕刻までまだ間がある。物陰をつたってこっそり少年宅へと向かった。十年前と変わらぬ場所にある家は、しかし少し老朽化が進んだようにも見える。
「ああほら、泣いちゃったよ。交代交代」
 裏手に回ったところで、苦笑交じりの声が届いた。十年を経てもすぐ分かる、イルだ。火がついたように突然泣き出した赤子に手を焼いている様子が、カーテンの隙間から見て取れた。
「あん? 赤子だと?」
 さらに目を凝らして、息を呑んだ。
 彼と同世代の女性が「あらあら」とでも言ってそうに、赤子をあやしている。その柔和な眼差しはイルとそっくりで、誰もがお似合いの二人だと祝福したことだろう。仲睦まじく笑い合う夫婦を見ていられなくなって、激情はふらふらとその場を離れた。
「クソ」
 漏れ出た悪態はゆるやかに地面へ溶けていく。
 行き場なく揺らめくこの感情は、怒りか諦念か。最初から分かっていたことだ。ヒトにとっての十年は重い。<激情>の影響下から逃れた幼い感情が燃え尽きてしまうには、十分な期間と言えよう。
 噛んだ唇から血が流れ、口いっぱいに苦味が広がった。
 冷たい風が肌を撫で、花々が美しい花弁を散らしていく。
「バカバカしい!」
 声に驚いた鳥が一斉に飛び立つ。懐かしいはずの森が、遠く知らない地に思えた。あれだけ踊っていた心も、今では何の足音も立てず鳴りを潜めている。ぎゅっと腕を掻き抱いた。そのままずるずると膝を折る。
「アタシは、<激情>の魔女」
 時には本人さえも意識してなかった感情を呼び起こす。しかし無から有を創り出せないのと同様に、<激情>の力もまた、ありもしない気持ちを創造するわけではない。イルの言葉はすべて紛れもない真実である。それだけが慰めだった。
 徐々に陽が傾いていく。果たされることのない約束ほど無意味なものもないだろう。激情はただ待つ。伸びる影を無表情に見つめながら、来ない相手を待ち続ける。
「あ、激情! もう来てたの? 待たせてごめんね」
 ハッとして、近づいてくる気配に振り返る。息を切らせて走ってくる懐かしい姿があった。
「テメェ、いつからこのアタシを呼び捨てにするほど偉くなった?」
 すぐに立ち上がって、腕を組んだ。
「ごめんごめん、でもなんだかもう『魔女さま』って感じじゃなくて」
 かつて自分を見上げていた双眸が、今は頭二つ分は高い位置にある。十年という歳月を思い知らされ、打ちのめされた気分だった。
「人間風情が調子に乗るなよ。ガキが、この十年で態度まででかくなりやがったか」
 悪びれた様子もなく微笑む姿に、何故だか無性に腹が立つ。
 睨みつけてやったところでイルの笑みは崩れない。むしろこの遣り取りを楽しんでいるフシさえあった。アタシを騙して面白がっているのか? 舌打ちが飛び出す。
「激情は、本当に何も変わってないね。僕も子どもの頃に戻ったみたいだ」
「触るな!」
 不意に伸ばされた手を拒絶する。はたかれた手と激情を交互に見て、イルはようやく理解したらしかった。
「もしかして今、すごく機嫌悪い? ごめんね。そんなに待たせちゃった?」
「ふん、さっさとあの女のもとに帰ったらどうだ? アタシもヒマじゃないんだよ」
 あくまでも素知らぬ顔をするイルに苛立ちは増すばかりだ。「あの女?」首を傾げるクソガキにさらに言い募る。
「しらばっくれても無駄だ。ヒヒヒ、もっとも赤子ひとり満足にあやせない男が戻ったところで、役に立つかは甚だ疑問だがな」
 自分でも驚くほど、次々と言葉が溢れてくる。
「ほら、アタシのことなんかキレイに忘れて愛する家族のもとへ帰れ。帰ってしまえ。前も言ったがアタシは優しいからな……呪うのは勘弁してやる。分かったらそのツラ、二度とアタシに見せるな!」
 強い拒絶に、しかしイルは合点がいったようで「なんだ、知ってたの?」さらに穏和な笑みを浮かべる。
「泣いてる子を置いてきたって、心配して怒ってるんだね。やっぱり激情は優しいね」
 どこまでも斜め上の解釈を突きつけてくるイルにいい加減ブチ切れそうになったまさにその時、まったく予想外な事実が激情の耳を打った。
「でも妹なら大丈夫だよ。確かに愛する家族だけど、もう旦那さんがいるからね。さっきも僕と入れ違いで戻ってきたよ」
「はっ? 妹だと?」
 起きたらすでに夕刻だったような顔になる。それはそれはマヌケな表情だったに違いない。
 こいつの妹を忘れるわけがない、激情が人里へ出るきっかけとなった人間だ。さっきの様子を見るに、この十年で美しく成長したようだ。人間の変化には驚かされる。
「ほら、病気を治してくれたでしょ。覚えてるよね?」
「そ、そそ、そんな昔のこと覚えてるか紛らわしい! このクソガキ! 人間風情がぁ!」
 考えを見透かされたような気がして、顔を真っ赤にして罵る。恥ずかしさで若干涙目である。
 しかし、そんな羞恥心よりもはるかに勝っているのが、やわらかな安堵。自分は今、心底ほっとしている。
 この胸に宿った灯火。それが潰えることなく燃え続けたのは、自分もイルも同じなのだ。それを面と向かって言えるほどの素直さは、残念ながら激情には備わっていない。
「貴様、魔女を騙してタダで済むと思うな!」
「騙す? 僕が?」
 きょとんとしたイルだったが、ようやく真に理解したようだった。にっこりともニヤリともつかない表情で激情に迫る。
「妹のこと、僕の奥さんだと思った? それでヤキモチ焼いてたの? 嬉しいなぁ」
「なっ、勝手なことぬかしてると呪うぞ!」
 激情がどう喚き散らしても「うんうん」とか「そうだね」と軽くあしらってくる。
 そうして、激情が言葉も息も切らした瞬間を狙って、手を差し出してきた。
「僕の気持ちは十年前からずっと変わってないよ」
 見つめてくる灰色の双眸から、逃れることができない。瞳に映る自分は酷く動揺して――しかし、何かを期待するようにじっと見つめ返していた。
「僕のお嫁さんになってくれませんか?」
 望んだ言葉。刹那にして満たされる心。
 激情はイジワルげに口角を持ち上げる。黙って胸ぐらを掴むと、引き寄せてそっと唇を重ねた。
 驚いているイルに囁く。ざまぁみろ、だまくらかしてくれた礼だ。
「後悔しても遅いからな。覚悟しておけよ!」
 破顔した激情は、嬉しそうにその手を取ったのだった。

UP:2014/10/20