【感想】金のロベリア②

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金のロベリアとは、両片思いをテーマとしたアンソロジーです。
加えて「強い女性」「滅び」が縛りのテーマとなっています。
※両片思いとは、思い合っていても理由がありなかなか結ばれない状態のことです


以上、公式より引用。
コミティアで頒布されたアンソロジーです。

金のロベリア感想①
金のロベリア感想③

今回もネタバレ(を気にしていない)感想です。



旅する書庫

ガルフの喋り方のせいでしょうか、それとも単語の選び方によるものなのでしょうか。なんだかものすごい見せつけられた感。それはさておき、教会により秘匿された歴史を暴き立てる、という筋書きは好み以外のなにものでもありません。ガルフは木人(と言うと、ILLBLEED浮かぶ…)とでも呼べばいいのでしょうか。いずれは大樹となる運命にありながら、災厄から逃れた人間よりも穏やかな生を過ごしているように思いました。それは祖先が毒に適応することを選んだ、一種の「寛容さ」を受け継いでいるからなのかなぁと。どちらが良い悪いの話ではありませんが、もし魔術士がどちらか一方の道しか提示しなければ、リリアやその仲間たちが異端として裁かれることもなかったのかと思うと、なんとも罪作りなお方です。
魔術士召喚からは怒涛の展開ですね。二人の会話を聞いていたガルフが、拳を握りながらも自らを抑えつけた事実に、決して頭の良くない彼にとって理屈ではなく、リリアへの想いただそれだけがあらゆることの原動力なのだなぁと。渡したくないと涙するガルフがどれだけの自制心を必要とし、その自制がどこからやってくるのか、考えるだけで切なさが溢れてきます。
新しいリリア(?)と彼がこれから歩いて行く道は、きっと明るいものだろうと、そう思えるラストにほっとしました。


アンジェリカ、その果てのない未来

現実にも根強く残る差別の問題。ローレンシアがすでに本来の「ランドルフ」を知らず、今後はその「知らない」世代が世界を回していく、そしてその本質も意味も知らずにただ「ランドルフである」という事実のみに注目して、委員会のようなことが静かに行われていくのでしょう。「ランドルフ」という役職、悪意と蔑みのかたまりで、そのえげつなさには思わず言葉を失うほど。「平等」という言葉がこれほど空虚に響く空間が、狭い世界だからこそ凝縮されているようで、あぁこれ私だったら不登校待ったなしですよ。
アンリがやきもきする気持ちも痛いほど分かります。
そこに一石を投じるのも、やはり「知らない」世代。存在すら認められなかったかつてのランドルフ人とは違う、と、そこから一歩「個」として当たり前に暮らしていける国を作るのは、ローレンシアたちの世代の大切な役割なのでしょうね。甘えてはいけないという決意は力強くもあり、まだあどけないはずの少女が持つには物悲しいです。
権利がきちんと権利として機能する健全な社会を、ぜひとも築きあげてほしいと思います。


惑星書簡を、ただひとりのきみへ

SFは苦手なので読む前は大丈夫かな~なんて思ってたのですが、これあれですね。囚われの姫君を救い出す王子様の話ですね。背景はとても陰湿で、リーザを閉じ込めた誰かたちは、きっとどこかに責任の所在を求めないと、収まりがつかなかったのでしょうね。血縁というある意味で最も根拠の薄い理由で人ひとりの人生を奪うことに、人間の底知れぬ闇を感じさせます。でも当事者たるリーザとセイトは、日々の鬱屈や不満を抱えながらもどこか温かいです。二人の交流はとても素朴で、(境遇を考えなければ)なんだか微笑ましい。
彼が運ぶ手紙ではなく彼自身がリーザの孤独を和らげていたという事実に、良かったねと、肩をたたいてあげたくなりました。単純接触効果なんて言葉もありますが、実際、吹き荒れる荒野にぽつんとひとり残されたら、気が狂いそうな孤独に苛まれるのではないでしょうか。特にリーザはラウルと会うことで一度孤独を脱してしまっているので、セイトを待つ日々は身を切るような寂しさがあったんじゃないかと思います。
結局セイトは自分が偽って手紙を出していたこと、リーザに告白したのでしょうか。「最初から知っていたわ」と微笑みかけられて、一緒になって笑い合う、そんな二人を想像してしまいました。合間に挟まれる手紙の文面がセイトのものだったという演出、とても素敵でした。

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